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しなやかに、たくましく進化した「ヨンヒャクCBR」
Honda CBR400R(2019)
貴重な400ccの本格フルカウルスポーツ、CBR400Rが大幅アップデートを果たした。海外モデルの500と同様、低中回転域のトルクを増強し、外装もシャープな新デザインにリフレッシュした新型の魅力を試乗チェックしてみよう。
文:宮崎敬一郎
※この記事は2019年5月6日にwebオートバイで公開されたものを再構成した記事です。
「使い切って」本領発揮の従順で優しいスポーツ!
末尾の「R」がひとつのCBRには、現在この400と650がある。
その外装はSSルックのフルカウルでカバーされ、カラーリングもスポーティなカラーで勇ましい化粧が施されている。
ホンダがアピールしているのもスポーティな走りのキャラクターだ。
だが、スポーティな走りとひと口に言っても「程度」の違いというものがある。
ここで誤解してはいけないのが、このCBR400Rは決して末尾の「R」がふたつ付くスーパースポーツのRRのような尖ったキャラクターではないということ。
このバイクはあくまでもスポーティなスタンダードバイクで、誰にでも乗りこなせる扱いやすさが魅力だ。
一見スポーティな前傾ポジションだが、少し座る位置を工夫すれば、街中でも苦にならない自然な前傾になる。峠道専用のバイクではないのだ。
さて、この新型CBR400Rは、今回のモデルチェンジで外装を変更しただけでなく、エンジンやシャシーにも手が入っている。
特にエンジンは大きな変更がなされた。最高出力発生回転を500回転下げて9000回転にしつつ、同じ46馬力ながら、実質的な最高出力や全回転域での発生パワーをアップ。
トルクも全回転域で増強している。
これはパワーチューンの中でも威力絶大な手法だ。瞬発力がスロットルにダイレクトになるなど、体感性能にストレートに反映されるパワーアップが施されているのだ。
このエンジンは不思議だ。旧モデル同様に穏やかなレスポンスなのは変わらないものの、3000回転以下での粘りや4000回転あたりからのダッシュ力がずっと強力になっている。
あえてスポーティに使いたいのなら6000回転以上がお薦めだが、基本的にはレッドゾーンの1万回転までストレートに吹ける、リニアでフラットな出力特性になっている。
エキサイティングな咆哮も発しないし、どの回転域でも吹け方は高揚感とは無縁。
恐ろしいほどフレンドリーで、常に穏やかに応答し続ける。これでそこそこ元気に走ってしまうから不思議なのだ。
この新型になって、車体周りではリアショックをさらに作動性のいいものにグレードアップしている。
前後とも、サスセッティングはSSとはほど遠い、ソフトでしなやかな味付け。荒れた峠道から高速ワインディングまで、どこを走っても乗り心地が良い。
しかも峠道でスポーティな走りをしてもバランスよく走る。詳細は不明だが、おそらくフロントフォークも、これに合わせてマッチングを見直しているのではないだろうか。
この動きのいいサスとフレームのしなやかさによって、ハンドリングの手応えはかなり軽い。
しかし、ある種の粘りのようなものがあって、キレの良さ、いい意味でのソリッドさは感じられない。
旋回性も中庸で、感触もスタンダードなストリートモデルだ。
このようなことを書くと、面白くなくて速くもないスポーツバイク…と誤解するかもしれないが、それは違う。
バイクに絶対的に強力な動力性能を求めるなら、今はこのクラスではなく、ひとクラス上のアッパーミドルをお勧めする。
このCBR400Rは、エンジンや車体の扱いやすさを活かして「使い切って」楽しむバイクなのだ。
ゴージャスな外装や電子制御のライディングアシストこそ装備していないが、精悍なSSルックを身にまとい、優しく「スポーツライディングの醍醐味」を経験させてくれる。
コーナリング中にパワーで旋回性をコントロールする楽しさや、フルスロットルでコーナーから立ち上がる快感を、乗り手のスキルに合わせて安全に楽しむことができる、いや、ビギナーでさえもすぐに楽しめるのだ。
この400Rはそれだけ素直で従順なバイクであり、これを駆使できるまで成長すれば、決して侮れないペースで走ることもできる。そんな等身大のスポーツなのだ。
文:宮崎敬一郎
webオートバイ記事公開日:2019年5月6日
※掲載記事は記事公開日時点の内容であり、時間の経過などに伴って内容に不備が生じる可能性があります。ご了承ください。