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【インプレ】カワサキ「エストレヤ ファイナルエディション」(2017年)
Kawasaki エストレヤ
文:太田安治
※この記事は2017年9月12日にwebオートバイで公開されたものを再構成した記事です。
美しさを愛で、慈しむオーナーの喜びは不変
新排ガス規制が9月1日から施行されることを受けて生産終了となった車種は数多いが、中でも「惜しまれつつ」というフレーズがぴったりな1台がエストレヤだ。
初代のデビューは92年。レーサーレプリカブームが終息し、250~400ccクラスはネイキッドやアメリカンが人気の中心になっていた。そんな中、60年代風のルックスと、性能よりもテイストを追求した単気筒エンジンのエストレヤは、当時は異端の存在。業界関係者の多くは本格的な作り込みに関心しながらも、バブル期のキワモノモデルと同様、短命に終わるだろうと思っていた。
だが、エストレヤの人気は着実に高まっていった。「異端」ではなく「孤高」の存在として、女性ライダーを含めた幅広いユーザー層を魅了していったのだ。07年には排ガス規制に対応してFIを採用したモデルチェンジが行われたが、レトロなデザインと乗り味というキャラクターがまったくブレなかったのも、ユーザーの思いを大切にしたからだ。
しかし、市場規模を考えると基本設計が25年も前の空冷エンジンで、こうしたテイストを保ったまま新規制に対応させるのは難しい。開発スタッフは、今回、断腸の思いで生産終了を決断したのだと思う。そのためか、このファイナルエディションの変更箇所は、50歳代中盤以上のライダーには懐かしい、650RS(W3)をオマージュしたグラフィックやシートデザインの変更程度だ。
エンジンはボア66mm×ストローク73mmで、現代の常識からみると「超」のつくロングストローク設定で、穏やかなピックアップと低中回転域での粘り強さが持ち味。早めにシフトアップすればタタタッ……という排気音と心地よい振動を味わえ、18馬力ながら非力さを感じさせないし、高速道路の100km/hクルーズも問題なくこなせる。
ハンドル切れ角が大きく、シート高も低いから、乗ったままでも降りて押しても取り回しやすいことも美点だし、厚手のシート、ソフトな設定のサスペンション、スポークホイールに組み合わせたバイアスタイヤで乗り心地がよく、ハンドリングも穏やか。エンジン特性と併せ、ロードモデルでここまで「のんびり走りたくなる」車種は珍しい。
僕は初期型に約7年乗っていたので、のんびり走らせる楽しさも磨き上げる喜びも知っている。エストレヤは牧歌的なオートバイライフを望むライダーには最適の1台だ。
文:太田安治
webオートバイ公開日時:2017年9月12日
※掲載記事は記事公開日時点の内容であり、時間の経過などに伴って内容に不備が生じる可能性があります。ご了承ください。