2016年に登場した人気の大型ミドルネイキッドスポーツ・スズキ『SV650』の登場時のインプレはどうだった?

あらゆるシーンで楽しめる爽快ミドル・ロードスター!

SUZUKI SV650(2016)

画像: あらゆるシーンで楽しめる爽快ミドル・ロードスター!

今年注目のモデルのひとつ、スズキのSV650がいよいよ発売開始となった。ミドルクラスではいまや希少なVツインエンジンのテイストを活かした、ライトウェイト・ロードスターの魅力を、早速日本の道で存分に試してみたぞ!

文:宮崎敬一郎
※この記事は2016年10月26日にwebオートバイで公開されたものを再構成した記事です。

素性の良さを活かした守備範囲の広い走りが魅力

画像1: 「スリム&シンプル」というデザインコンセプトのもとで生まれたSVは、前モデルのグラディウスが優美なボディで「魅せる」バイクだったのに対し、外装パーツを最小限に絞り込むことですっきり感を出し、骨太のスポーツバイクに仕立てられている。

「スリム&シンプル」というデザインコンセプトのもとで生まれたSVは、前モデルのグラディウスが優美なボディで「魅せる」バイクだったのに対し、外装パーツを最小限に絞り込むことですっきり感を出し、骨太のスポーツバイクに仕立てられている。

単純に考えてみるといい。600〜800ccいうミドルクラスは、排気量が400の1.5〜2倍だ。その分強力なトルクがあるし、そのトルクが、同じ走りをするとしても、より回転を抑えたゆとりのあるライディングを生む。400とほとんど変わらない車格に収めるのも容易だ。

だから、コミューターとしての万能性とともに、ツーリング、スポーツモデルとして、よりパワフルなリッタークラスにも近いゆとりを発揮する。これが世界的にミドルクラスを万能スタンダードモデルとして定着させている理由だ。

このSV650もそんな万能スタンダードスポーツ。国内では400のみがリリースされているグラディウスの兄貴分、650をベースに外装をシンプルなものに変更。

画像: スズキ『グラディウス400』(2009)

スズキ『グラディウス400』(2009)

フレーム形状はほぼ同じだが、足回りを一新し、エンジンもVストロームのようなトルク型にリメイク。発表によると60カ所以上を変更、最高出力はこのクラスとしてはかなり強力な76.1PSを発揮する。

ベースとなったグラディウスと比べると、新型のエンジンは随分と変わっている。瞬発力、粘りとも5000回転以下で桁違いに力強い。650は海外で何度か試乗する機会があったが、その粘りは強力。しかも使い勝手がいい。

画像: グラディウスをベースとする645ccの90度Vツインは76.1PSというハイパワーを発揮。実に60カ所以上のパーツを新設計したという、事実上別物というべきユニットで、ユーロ4にも対応し、燃費も向上させている。

グラディウスをベースとする645ccの90度Vツインは76.1PSというハイパワーを発揮。実に60カ所以上のパーツを新設計したという、事実上別物というべきユニットで、ユーロ4にも対応し、燃費も向上させている。

400のようなあからさまな高回転型ではなく、かなりフラットで、スペック上の最高出力発生回転数の8000回転を越えても、それまでの吹けと同じような勢いのまま、レッドゾーンの1万回転を越えて1万1000回転あたりまで伸びていく。

それも敏感なレスポンスではなく、むしろおおらかな応答性。使いやすいパワーを、非常に使いやすく供給してくれる。これが用途を選ばない使い勝手の良さを生んでくれる。個性的でスポーティなイメージのあるVツインだが、振動が少なくスムーズで非常に従順だ。

画像: 素性の良さを活かした守備範囲の広い走りが魅力

加えてこのSV、取り回しもいい。車格はこのクラスでも小柄な部類で、ハンドル位置が高いので押し引きが楽だし、小柄なライダーにも合わせたようなライディングポジションで、足つき性もミドルクラスの中でトップレベル。これも魅力だ。

しかし、このバイクはただ扱いやすいのが魅力というわけではない。確かに、非常にシンプルな造りだし、パワーモード切り換えなどの、電子的なライディングアシスト機構も付いていない。だが、それにしては走りの守備範囲が非常に広いのだ。これが新型SVの最大の魅力だと思う。

画像: トラス構造のスチールパイプフレームは基本的に前モデルのグラディウスをベースとしているが、車体関係で70箇所以上のパーツを見直すことで、車重がかさばりがちなVツインモデルでありながら196kgという軽さを実現。軽快なハンドリングに一役買っている。

トラス構造のスチールパイプフレームは基本的に前モデルのグラディウスをベースとしているが、車体関係で70箇所以上のパーツを見直すことで、車重がかさばりがちなVツインモデルでありながら196kgという軽さを実現。軽快なハンドリングに一役買っている。

足まわりは常用域での快適さが光るものの、及第点以上のスポーツスタビリティも確保。100km/hまでの速度レンジなら、フルバンクや切り返しで乗り越える凸凹にもある程度ゆとりをもって耐える。このジャンルのバイクとしては上質な接地感だ。いくらか柔らかめのバネに、ムダな動きを抑え込むような、粘り気のある減衰力をあてがわれている感じ。これがたぶん、上質な乗り心地を生んでいるのだろう。

このSVの特長は、色々な意味で「おせっかいなアピール」をしない高性能を秘めていること。バイクの方から「さぁ飛ばせ」とか「ゆっくり走らないと暴れるぞ」というような強要がない。誰に対しても、快適で、パワフルで、乗りやすく扱いやすい。いい意味で、使い勝手のいい道具なのだ。

画像2: 「スリム&シンプル」というデザインコンセプトのもとで生まれたSVは、前モデルのグラディウスが優美なボディで「魅せる」バイクだったのに対し、外装パーツを最小限に絞り込むことですっきり感を出し、骨太のスポーツバイクに仕立てられている。

「スリム&シンプル」というデザインコンセプトのもとで生まれたSVは、前モデルのグラディウスが優美なボディで「魅せる」バイクだったのに対し、外装パーツを最小限に絞り込むことですっきり感を出し、骨太のスポーツバイクに仕立てられている。

きっと多くのライダーが、新型SVをすぐに自分の手足のように使えることだろう。それでいて、カスタム素材としても魅力的。自分色のキャラクターに染めるにしても「どうにでもなってみせるよ! 」と応えてくれる、従順な相棒でもある。プライスも実にリーズナブル。これもウレシイ。

文:宮崎敬一郎

webオートバイ記事公開日時:2016年10月26日
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