『 ビギナーからベテランまで楽しめる爽快スポーツ』
YAMAHA MT-07(2014)
文:宮崎敬一郎/写真:南孝幸、
軽くしなやかな走りとスタイルは1クラス上のマシンにも負けない!
MT-07を見たときから、気になっていたことがある。それは「MT-09とどうやって棲み分けるんだ?」ということ。この排気量は、欧州ではエントリーユーザーが注目するクラスで、MT-09はさらにプラスαのパワーを魅力にするモデル。
言葉で言えば納得できるが、実車を見比べると悩みそうな気がする。それだけMT-07はとてもチャーミングなのだ。MT-07は270度クランクのパラツインを搭載し、欧州で保険などを優遇される85PS以下のスタンダードスポーツ。
プライスも抑えられているが、その斬新なデザインで、その造形、車体各部の造りなどに安っぽさをまったく感じない。まず、コレがすばらしい。そしてそのパワーフィールがまた面白い。
主張しすぎない、ツインらしいパルス感が4000回転以下にあり、よく粘る。ピックアップもリニアで力強い。どこの回転域からでも意のままに力を発揮する。使っていて気分がいい。さらに引っ張れば、ほぼフラットに1万回転ほどまでよどみなく回る。そこでもイヤな振動もなく、バランスもいい。
6速・100km/hは約4200回転。クルージングしているとパルス感で小気味良くもあり、ちょいと速度を上げればいきなり滑らかにもなる。
気分で好きなところを楽しめるのだ。いい遊び相手になる。直接比較してないので断言はできないが、MT-07の中域トルクのコシの強さ、そこからの実質的なトルクのピックアップはこのクラスで一番だ。
ハンドリングは素直で軽快。身軽さは…毎度の例えだが、まるで400のネイキッドだ。足まわりもしなやかで快適だ。この足まわりのセッティングはMT-09よりも少しコシが強く、かなりスポーティな走りもノーマルセッティングのままでこなす。
MT-09よりパワーもペースも低いところでの話だが、車体、エンジン、足まわり、それぞれのドライバビリティが絶妙なマッチングでバランスしている。
なんだか、既に2、3回モデルチェンジをして熟成されたバイクのような印象を受ける。ただ扱いやすいだけでなく、面白さ、楽しさといった要素がたくさんある。この魅力はMT-09にもあるが、タイプが違う。単なる排気量による上下関係ではないのだ。
だから、試乗してみてさらに悩むようになった。MT-07は、そんな少し上のクラスにも通じる完成度と面白さを持ったバイクだ。しかも、乗り手も使い方もまったく選ばない。悩ましいほど、よくできたバイクだ。
文:宮崎敬一郎/写真:南 孝幸、森 浩輔/まとめ:オートバイ編集部
webオートバイ記事公開日:2019年9月14日
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