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ホンダ「ホーク11」インプレ(2022年)
HONDA HWAK 11(2022)

ロケットカウルを採用したホンダの新型車「ホーク11」。セパレートハンドルを採用したスポーツバイクと思っていたが、実は意外なコンセプトのもとに開発されていた。バイク人生の最後を飾る「上がりバイク」という大役を担っていたのだ。
文:宮崎敬一郎/写真:南孝幸
※この記事は2022年8月4日にwebオートバイで公開されたものを再構成した記事です。
懐の深いゆとりのあるハンドリングとエンジン

ホンダはCRF1100Lアフリカツインの骨格とエンジンをベースにホーク11を生み出した。しかもエンジンは仕様変更などいっさいせず、フレームを前方に回転させることでキャスター角を2.5度ほど立たせ、エンジン搭載位置を前方に移動させることでフロント回りのジオメトリーを独自のものにしている。
そして外観は、アフリカツインと比べて見事な変身ぶりだ。古のカフェレーサーを彷彿させるようなロケットカウルとそれに繋がる迫力のタンクとシートなど、かなり個性的なデザインになっているので、好き嫌いがはっきりと分かれそうだ。
しかし、間違いなく乗り手を納得させる仕上がりになっている。塗装は綺麗だし、制御系の配線やカプラー、オイルラインなどは上手く隠され表からは見えない工夫がなされている。加えて、ホーク11の車格はけっこう大柄、というか長い。そのサイズが生み出す迫力はCB1300SBさえ圧倒する。このフォルムが大きな魅力だ。

ホイールベースは1510mm。見た目どおりかなり長い。それとフロント荷重が多めに掛かっていることもあって、ハンドルの節度が強く、どっしりとしている。手応えとしてのハンドリングにはツアラー的な重厚感すらある。ただしその応答性が徹底的に従順なのだ。身のこなし自体は機敏ではないものの鈍重ではなく、ライダーに対してゆとりのある操舵特性を実現している。これがなかなか面白い。
前後サスの作動は上質で細かい凸凹をまるで高級ツーリングスポーツバイク並みに吸収するので、乗り心地はかなり良い。スポーティな走りをしている時でも荒れた路面にも強く、高荷重を受ける高速コーナーでもなかなかの踏ん張りをみせる。とくに長めのリバウンドストロークを蓄えたフロントのスタビリティはライダーに安心感を与えてくれる。
またダイヤル調整でプリロード変更が可能なリアサスは、セッティング次第でバイクの旋回性を大きく変えることもできる。ただスーパースポーツのようなキレのあるシャープなコーナリングができるようになるのではなく、大らかなハンドリングと運動性能は変わらない。

さらにエンジンとそのマネージメントはアフリカツインのまま。回さなくてもツーリングを快適にこなすトルクとスポーツするのに十分なパワーを発揮する。素として持っている使いやすさ優先のパワーユニットだ。このクラスとしては特に強力ではないが、とにかく乗り手に優しい。
2500回転ほどから街中を流すのには十分なトルクを発生し、4500回転も回していれば緊張感なくスポーティな走りができるコシのあるパワーが湧き出てくる。スーパースポーツのマルチエンジンのように高回転まで回るのではない。レッドゾーンが始まるのは8000回転と低め。さすがに低いギヤで引っ張るとすぐにレッドゾーンまで回り切ってしまうので頭打ちが早めに感じてしまう。
このエンジンは、簡単に回せて使い切れる数少ないリッターエンジンといっていいだろう。ただエキサイティングな吹けや伸びを期待してはいけない。そうではないところに魅力の核を置いているエンジンだからだ。ここだけは誤解してはイケナイ。

上半身を伏せるとロケットカウルとライダーの一体感が増し、一段とカウルのデザインが際立つ。ロケットカウルの防風効果は、ミゾオチより下を直風から凌いでくれる。
このホーク11はオシャレなバイクだ。シンプルで丁寧なエクステリアで仕上げられたオトナの高級感は、強烈なオーラを放っている。そんなスタイリングのバイクが、ビッグバイクらしい手応えを楽しませながら、驚くほど従順にあらゆる走りに対応するということが最大の魅力なのだ。
ホーク11は速さや限界性能などハナから眼中にない。試乗して頭に浮かんだのは、かつてのCB-SFシリーズになった「BIG-1」のカフェ・ツイン版……そんな雰囲気やテイストをビシビシと訴えてくる走りっぷりだった。
文:宮崎敬一郎/写真:南孝幸
webオートバイ公開日:2022年8月4日
※掲載記事は記事公開日時点での内容であり、時間の経過などに伴って内容に不備が生じる可能性がります。ご了承ください。